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お日様と鈴蘭

円さんのSS「さようなら、また明日」の聖雪サイド+α(メッセでのこと)のSS。
何だか取りとめも無い文章ですみません(ぁあ)









「…円さん?」


振り向いて彼女の目を見た時、脳裏に過ぎったのは

(──うわぁ、まずいですねぇ)

そんな自嘲だった。
別に取り立てて何かを隠していた訳ではない。
──否、正確には、笑顔を保つのにちょっとの努力は必要だったけど。
それでも自然に微笑んで、どうしました?と、問いかけもする。

でも、彼女の心配そうな表情と視線は。
この手を掴む手の温もりは。

誤魔化しを許してはくれそうも無いと──それがとても、よく判る。

「…聖雪、顔色…悪くないか?」

寝不足が顔に出ていたか。
それとも、己の中の不安と痛みが、顔に出てしまっていたのだろうか。

(──失敗ですねぇ……)

一番心配をかけたくないこの人は、色々とこういった事に敏感だ。
接客業に慣れ、大人達の前でも完璧に、
笑顔のポーカーフェイスを保てる自分が通じないのは、
今は亡き両親と京都に残した幼馴染だけだった。
それに新たに名を連ねたのが、目の前の彼女だったりする。
人の反応に細やかに気がつく彼女のそんな所がとても好きで、
だけど、こういう時は困ったなぁと内心頬を掻いたりもした。

案の定、大丈夫だと告げても。夢見が悪かったのだと話しても。
彼女の心配そうな表情は晴れない。
大好きな、大好きな太陽のような笑顔が曇るのは、申し訳ない気がして仕方ない。
その度に、内心で頬を掻いていた自分の頭が、どんどん下がっていく。

「行く」
「…はい?」

思わず問い返した。察しはついたが、だからこそ問い返した。

「今日は私、聖雪の家に泊まるから」

(──ああ、本当に)

どうしてだろう。本当に。
不思議な位に、この人ときたら……

「お泊りは大歓迎なのですよ」

この人ときたら。
なんとも軽やかに自分の心の中にすとんと降りてくるのかと。
それが何処か嬉しくて、夕焼けの光にきらきら輝いて見える彼女に、微笑んだ。


      ◇ ◇ ◇


初めて、自分以外の人がこの部屋で過ごした夜。
……誰かと手を繋いで眠るのは、どれだけ振りのことだっただろうか。
灯りを落として暫くは寝入っていたのだろう自分の手を、
隣で眠る彼女がちゃんと握っていた。

離さない様に。離れない様に。

──肝心なことは、結局何も言えないままだった。
彼女も気を使ったのだろう、訊こうとはしなかったし、
それに甘えた自分は話さないまま夜が過ぎていく。

(──ありがとう。円さん)

起こしてはいけないから、唇だけを動かして紡ぐ。

(ごめんね。せやけど、おおきに。ありがとう。)

もっと自分が強かったなら、貴女を心配させることもなかったろうに。
巌の様に心を保っていたならば、貴女に気付かせることもなかったろうに。

この人は本当に優しい人だ。
自分はそれを初めて結社で共に戦った時に知った。
誰かが傷つくこと、誰かを失うこと、何よりそれを恐れてる。
だからこそ、あれ程に賢明に頑張るのだ。

──この人と一緒にいっぱい思い出が作れたらどんなに楽しいだろう。
──この人の進む先を支えてあげられたらいいな。
──私も、頑張ろう。

そう、あの時思って。
そして勇気を出して声をかけた。
この人に足る友達に、なりたくて。なりたくて。

今、彼女が自分にくれているものは、大きくて余りある幸いだ。
それを返せないと、なんだか申し訳ない。
──そう思って、酷く困惑している自分に気がついた。

両親以外の誰かに甘える事に──自分はちっとも、慣れていない。
どこまでが迷惑でどこまでがそうでは無いのかの匙加減が掴めない。
両親の縁者に拾い子と罵られ、気味が悪いと避けられ、両親が死んでからは遺産相続した自分に冷たい目が降り注いだ。
身を護るためには早く大人になるしか、なかった。
独りで生きられるようになるしか。

でも、彼女の前では──自分は17歳の少女なのだと自覚する。
どちらの自分を保てば良いのか困惑する。

ほんの少し、きゅっと握った手に、起こさないように力を込めた。

夢の中までも護ってくれるのならば。
自分も貴女の夢の中で、貴女を護りたいと、そう願いながら目を閉じる。
葛城山では、彼女はきっと、戦いの道は選ぶまい。
傷つく仲間が出るであろう戦争を彼女は選ぶまい。
それで良い。それが良い。
多くの者達が彼女を慕い必要としている。
戦うべしという気持ちも判り、戦うべきでないという気持ちも判るから、
例え今回の選択で別の道を選ぼうとも、彼等への思いは変わるはずも無い。
心配させるかもしれないが、それは、無事に帰ってくることで許してもらおう。
此方の道が選択されなくても、ならば一緒に彼女達の道を支えるようにバックアップしよう……

うとうとと、手から伝わる温もりに再び眠りに落ちていくのに、そう時間はかからなかった。


──しかし、その想定は半分当たりで。
半分は、大外れだった。
真実は常にその斜め上をすっとんで行く事を、思い知ることになる。


      ◇ ◇ ◇


「──ま……円さんっ!?」

翌日。殲滅戦参加の意志を示し、チームを立て、相談を始めた矢先の事だ。
部屋に元気良く入ってきた彼女の姿に、それこそ仰天して思わず声を上げた。

「って、ことで皆、私も参加だ。よろしく頼むぜ!聖雪、頑張ろうな!」

ぱくぱくと、言葉を失っているその状態を鯉のようだと思った者達は恐らく少なくあるまい。
予想通り彼女は戦闘を支持しなかったはずだ。
情報を必要とし、仲間が怪我をするのを見たくないと言ったのも確かにこの耳で聞いた。
だから内心は少しほっとしていたのだ。
万一殲滅戦になっても彼女は参加しないのだから、身の安全は保障される訳で──

「ち、ちょっと失礼!」

今度は慌てて自分が彼女の腕を取って部屋の外に引っ張り出す番だった。

「……どうした?聖雪。早く作戦とか相談し……」
「円さん、円さん。落ち着いてよく考えて下さいね?
 他にやりたい事、あったんでしょ?聞きたいこと、あるって言ってたでしょ?
 自分のしたいこと、曲げて無いですか?自分に嘘、ついてませんか?」

多分、この時の自分は、彼女の真向かいで真っ直ぐに彼女を見上げる自分は、
真剣な面持ちで正直笑っている余裕などなかったと思う。

彼女が自分の信念や意志を曲げることはありえない。
だが、可能性があるのだとして──その理由はもしや、彼女の優しさに起因するものではなかろうか。
そしてそれを喚起させた原因は──

「一番やりたいこと、やりにきた」

彼女は、にっこりといつもの笑顔で、自分の二の句を遮る様に、言った。

「逆の後悔を考えたんだ。
 もし私が攻める側で、攻めない事に決定しても私は後悔しない。
 でも、もしこのまま私がここに残って、攻める事になって、
 聖雪に何かあったら私はきっと凄く後悔する」

『──もし聖雪姉さんや、皆に何かあったらと思うとぞっとします……僕も行きます』

自分を姉と慕ってくれる義弟の姿が、重なった。
胸が熱く痛い。

「私だって、もし円さんや皆さんに何かあったら、凄く後悔しますよ?!」

自分の心に、決めた事に胸を張って。その道を貫いて。
どちらを選んでもきっと弊害はあるだろうし、結果が出たら、もう一度戻って選び直すことは出来ないから。
そう言って、自分の決断に悩む他の友人の背中を自分は押してきたばかりで。

なのに、これでは言えない。
これが彼女のやりたい事、になってしまっているのなら、何も自分は言えなくなる。

「…………ずるいですよ、円さん」

そうではない。ずるいのは自分だ。
戻ってと。戦わないでと。言えない。
涙が出そうになるのは何でだろう。

泣くのを堪える為にきゅむっと彼女を抱きしめた。
聞こえるのは心臓の音。
どうかどうか、この命の音がずっとずっとずうっと続いて行きますように。
どうかどうか、貴女がずっとずっと幸せでありますように。

「戻ってと言っても、聞いてくれませんよね?」
「当たり前ですよ、一緒にいないと護れないのですよ」

自分の口調を真似て彼女は笑うと、頭をそっと撫でる。
顔を上げた自分の額に彼女の額がこつんと当たる。

「大丈夫、皆で一緒に戦うんだから。
 お互いに護りあっていけば必ず無事に帰れる」

彼女の言葉に頬に毀れた涙を拭い、綻んだ笑顔を浮かべた。
そして、自分の頬をぺしぺしと叩く。
共に戦うのは自分で選んだ者達だ。
誰にやらされた道でもない。

「有難う。参りましょう、円さん。絶対皆で一緒に帰りましょう」

自分が選択した結果は誰もが受け入れなくてはならない。
ならば最善を。より最善に近い結果を。
おう!と、彼女が頷いた。
が、部屋に戻る途中、あ、と足を止める。

「なあ、私、女王にききたい事があるんだ。
 『土蜘蛛は人を食わねば生きられないのか』って」

その言葉に、自分は深く頷いた。

「それがきっと一番皆さんが知りたい事だと思います」

人を喰らう以上、人と土蜘蛛の共存は無理だ。
人身御供の風習もあった古代と違い、現代ではそんな事は許されない。
誰かの大事な人を皆で殺すことになるのだから。

「私も伺いたかったのですよ」
「よっし!んじゃやってみる!」

パン、と掌に拳を当てる彼女と顔を見合わせて頷いた。
足を揃えて踏み出した道がどこに続くのかは判らない。
だけど──

何があっても私は、この人を護ろう。
私を護るこの人の背を。この人を取り巻く世界を。
この人の足には翼が生えていて自分の斜め上を飛んでいくけど。
ならば大地から彼女を護って行こう。
翼が疲れた時に休めるように。

「お待たせしました。では──」

太陽の光を受けた花は、折れることなく輝いて大地にしっかり生えていくのだから。
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この作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
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TW2「Silver Rain」参加PC「鴬生・聖雪(おうしょう・みゆき)」の雑記とかいろいろ。
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