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〔仁義なきぼくらの戦い~あんたら覚悟しぃや~〕第二幕:寅の間章

※〔仁義なきぼくらの戦い~あんたら覚悟しぃや~〕第一幕:影の間章の続きです※



第二幕:寅の間章



「寅靖さんの行くところもまぁ大体目安はついていたのですよ」

そう言うと、聖雪は又一口紅茶を飲んだ。
彩蟲が不思議そうに首を傾げると、ぴっと聖雪は人差し指を立ててみせる。

「一つに、寅靖さんはお二人と別行動をとった場合、短距離一本勝負を狙うよりは追う方に時間のかかる、やや遠回りの細道の多い地帯を選ぶだろう事。これは他のお二人の時間稼ぎも兼ねますね」

そして、と指を増やす。

「二つに、寅靖さんは何をさて置いても彩蟲さんに激ラブだと言う事です」

それには彩蟲もきょとんとした顔をし、次いで少し照れたように眉尻を下げる。

「影郎さんが先程説明した様に、三人で唯一持ってるエアライドという武器を活かしてこちらの方に向かうなら、恐らく寅靖さんは其方とは別方向で選ぶでしょう。
 で、路地の多い方を選ぶと実は目標の雨禅さんちからは遠くなっちゃうんです」
「……あら、こちらに向かうと私の家に、近いですわね」
「其処がミソです。で、寅靖さんはこの辺り一帯のどこかで大幅に時間ロスするのですよ。必ず」

そう言って、地図を指でなぞった。
路地の密集地帯の、彩蟲の家方面に抜ける途中のポイントだ。

彼は此処の辺りで気がつくだろう。
緊急ではないにせよ危険に陥った時、本能的に人は全く知らない道よりも、幾度か通った事のある地域を選ぶ。
しかし、散らばった他の二人からの連絡はない上、見通しの悪い路地で追っ手がどの辺りにいるか読み辛い状況は、潜伏場所として留まり続けるにはマイナス以外の何者でもない。
ならば、どうする?一旦安全な所に避難して対策を練るか。
そして導き出される最も安全な避難先──

それを思い出した瞬間、彼は足を止めるしかないのだ。どうしても。


  *  *  *


「――うふふー、やっと見つけましたよー寅靖さん♪」


その時の彼の表情は明らかに、死出の道行の覚悟をしたかのような遠い眼差しだった。
そう、男寅靖此処に在り。気分はもはやサムライハラキリである。

ざり。
一歩進むと煤けた路地裏のアスファルトが嫌な音を立てた。
その度にどんどん彼のハートの煤け具合も増していく。

「――鴬生、俺は思うんだが……ここは一つ、平和的な解決というわけには」

言った直後の張本人が、やっぱ駄目だよなというか寧ろこれって死にフラグ立てたと気がついたように顔を引きつらせる。

──しかし、彼の予想を裏切る様に、彼の眼の前で足は止まった。
見ると、そこには聖雪の困った様な、寂しげな微笑があった。

「嫌ですねぇ、寅靖さん……そんなお顔なさらないで下さいな。
 私にとっては彩蟲さんも、大事なお友達ですもの。
 暴力で彩蟲さんを悲しませる事なんて、私にはとてもできないのですよ……」

そう。
彼が此処で腹を決めたのは、彩蟲に類が及ぶ事を恐れての事だ。
真面目で律義者の彼が(既に大いに親友を巻き込んでいるのはさて置き)最愛の人に危険を及ぼさせる行為を選べるはずなんぞないのである。

「……しかし、その……」

言いかけた寅靖の眼前に、そっと、聖雪が両手でハンカチを差し出した。

「彩蟲さんも心配しておられましたよ。大丈夫、蟲笛とかほら、持ってませんから」

イグニッションしている様子もないのは当然見て判る。
この瞬間、彼に物凄い罪悪感が生まれたか否かは定かではない。
男寅靖。武士の魂ラストサムライ。

一度は腹を括った身である。ここで例え拾った命であろうとも──

その瞬間。




空から

「渕」

何かが

「埼」

何かが──

「寅靖──!!」

降 っ て き た 。


それを見上げたラストサムライ若頭の表情は驚愕と絶望のオンパレードだった。
顔はマスク、靡くマフラーはまさしくルチャ影。
しかし──しかし!!!

明らかに何かが違う!!違いすぎる!!そして何でそんな状態になったのか!?
一瞬、視線の端に聖雪の笑顔を見た。そして瞬時にその理由を悟った。
そしてこれから己に起きるであろう壮絶な、想像を超える壮絶な事態を理解した。
その笑顔は若女将スマイルではなく──

──ブラックいっぱいの総代スマイル。

そう──総代はそれを知っている。

知っていたから敢えてその手段を選んだのだ。

本当の恐怖は地獄に落ちることではない。

──地獄を見ること、なのである。



  *  *  *



既に陽は傾きかけ、冬の夕暮れが近付いていた。
ケーキは既に無く、紅茶も幾度かのお代わりを経ている。

「剛一さんがねー……ある種一番厄介なのですよ」

彼の気性からして咄嗟の時に選択するのが早い。
自分が電話をかけた時に逃亡を決断するのが即断だったのも、恐らくは彼の性格と嗜好の影響もあっただろう。
面白い事には豪快に飛び乗り突き進む。
即ち、あれやこれやの小細工は無意味であり、例えばどんな不慣れな場所でも遠慮なく突っ込んでいく事だろう。

ならば、それを捉える為にはどうするべきか。

「機会は一度きりなのです。此処を逃すと次はないでしょう」

仁義なき戦いの決戦の場にあって、一辺の抜かりも赦されない。
成る程、と彩蟲は頷いて──頷いて。

肩を震わせながら、涙を拭いつつこらえていた。

「と、いう訳で。私はそろそろ参りますね。長い間お邪魔したのですよ」
「………み………聖雪さん………」
「はい?」
「………いえ………どうぞ、此処まで来たら最後までやり遂げて下さいな」

彩蟲の言葉に、聖雪はにっこりと微笑み──頷いた。

「さぁ、参りましょう」

すっくと立ち、部屋を後にする聖雪と──その後に続く”影達”を。
彩蟲は見送った。

(……骨は、拾って差し上げますからね、皆様)

そう、内心で呟いたが。

(……もしかしたら骨も残らないかもしれませんね……)


震える肩が、こらえきれぬように波打った。



一人彩蟲が残った部屋に──とうとう、我慢の限界を超えた彼女の笑い声が流れ出していた。


《続》


NEXT予告:いよいよ仁義なき戦い最終決戦!!一人逃げ続ける剛一の運命は!?
新たなゲストも加わって混沌とする戦場、総代の仕置きに全俺が戦慄し涙する!!!
……かもしれない(背後執筆ちう)
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コメント

|;・・))))))ガクガクガクガク

(紫月は怯えている!)

お、俺は絶対に総代にだけは絶対に逆らわない、と心に刻み付けました。
天城先輩と雨禅先輩の無事を心よりお祈りしています…!
非公開コメント

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鴬生聖雪

Author:鴬生聖雪
この作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
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TW2「Silver Rain」参加PC「鴬生・聖雪(おうしょう・みゆき)」の雑記とかいろいろ。
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